ォわだ》って、両方に突張っている、手前に例の木蘭がふわりと浮き出されているほかは、床《とこ》全体の趣《おもむき》は落ちつき過ぎてむしろ陰気である。
「徂徠《そらい》かな」と和尚《おしょう》が、首を向けたまま云う。
「徂徠もあまり、御好きでないかも知れんが、山陽よりは善かろうと思うて」
「それは徂徠の方が遥《はる》かにいい。享保《きょうほ》頃の学者の字はまずくても、どこぞに品《ひん》がある」
「広沢《こうたく》をして日本の能書《のうしょ》ならしめば、われはすなわち漢人の拙《せつ》なるものと云うたのは、徂徠だったかな、和尚さん」
「わしは知らん。そう威張《いば》るほどの字でもないて、ワハハハハ」
「時に和尚さんは、誰を習われたのかな」
「わしか。禅坊主《ぜんぼうず》は本も読まず、手習《てならい》もせんから、のう」
「しかし、誰ぞ習われたろう」
「若い時に高泉《こうせん》の字を、少し稽古《けいこ》した事がある。それぎりじゃ。それでも人に頼まれればいつでも、書きます。ワハハハハ。時にその端渓《たんけい》を一つ御見せ」と和尚が催促する。
とうとう緞子《どんす》の袋を取り除《の》ける。一座の視線
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