]は余であるから、余は余の興味を以《もっ》て、一つ風流な土左衛門《どざえもん》をかいて見たい。しかし思うような顔はそうたやすく心に浮んで来そうもない。
 湯のなかに浮いたまま、今度は土左衛門《どざえもん》の賛《さん》を作って見る。
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雨が降ったら濡《ぬ》れるだろう。
霜《しも》が下《お》りたら冷《つめ》たかろ。
土のしたでは暗かろう。
浮かば波の上、
沈まば波の底、
春の水なら苦はなかろ。
[#ここで字下げ終わり]
と口のうちで小声に誦《じゅ》しつつ漫然《まんぜん》と浮いていると、どこかで弾《ひ》く三味線の音《ね》が聞える。美術家だのにと云われると恐縮するが、実のところ、余がこの楽器における智識はすこぶる怪しいもので二が上がろうが、三が下がろうが、耳には余り影響を受けた試《ため》しがない。しかし、静かな春の夜に、雨さえ興を添える、山里の湯壺《ゆつぼ》の中で、魂《たましい》まで春の温泉《でゆ》に浮かしながら、遠くの三味を無責任に聞くのははなはだ嬉しい。遠いから何を唄《うた》って、何を弾いているか無論わからない。そこに何だか趣《おもむき》がある。音色《ねいろ》の落ちつ
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