ゥ》されて、夜と昼との境のごとき心地《ここち》である。女はもとより夜と昼との境をあるいている。
この長い振袖を着て、長い廊下を何度往き何度戻る気か、余には解からぬ。いつ頃からこの不思議な装《よそおい》をして、この不思議な歩行《あゆみ》をつづけつつあるかも、余には解らぬ。その主意に至ってはもとより解らぬ。もとより解るべきはずならぬ事を、かくまでも端正に、かくまでも静粛に、かくまでも度を重ねて繰り返す人の姿の、入口にあらわれては消え、消えてはあらわるる時の余の感じは一種異様である。逝《ゆ》く春の恨《うらみ》を訴うる所作《しょさ》ならば何が故《ゆえ》にかくは無頓着《むとんじゃく》なる。無頓着なる所作ならば何が故にかくは綺羅《きら》を飾れる。
暮れんとする春の色の、嬋媛《せんえん》として、しばらくは冥※[#「しんにょう+貌」、第3水準1−92−58]《めいばく》の戸口をまぼろしに彩《いろ》どる中に、眼も醒《さ》むるほどの帯地《おびじ》は金襴《きんらん》か。あざやかなる織物は往きつ、戻りつ蒼然《そうぜん》たる夕べのなかにつつまれて、幽闃《ゆうげき》のあなた、遼遠《りょうえん》のかしこへ一分ご
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