B野武士の顔はすぐ消えた。那美さんは茫然《ぼうぜん》として、行く汽車を見送る。その茫然のうちには不思議にも今までかつて見た事のない「憐《あわ》れ」が一面に浮いている。
「それだ! それだ! それが出れば画《え》になりますよ」と余は那美さんの肩を叩《たた》きながら小声に云った。余が胸中の画面はこの咄嗟《とっさ》の際に成就《じょうじゅ》したのである。
底本:「夏目漱石全集3」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年12月1日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版夏目漱石全集」筑摩書房
1971(昭和46)年4月〜1972(昭和47)年1月
入力:柴田卓治
校正:伊藤時也
1999年2月17日公開
2004年2月26日修正
青空文庫作成ファイル:
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