A原口さんは「どうです」と二人《ふたり》を見た。夫は「結構です」と言って、眼鏡《めがね》の奥からじっと眸《ひとみ》を凝らした。
「この団扇《うちわ》をかざして立った姿勢がいい。さすが専門家は違いますね。よくここに気がついたものだ。光線が顔へあたるぐあいがうまい。陰と日向《ひなた》の段落がかっきりして――顔だけでも非常におもしろい変化がある」
「いや皆御当人のお好みだから。ぼくの手柄《てがら》じゃない」
「おかげさまで」と美禰子が礼を述べた。
「私も、おかげさまで」と今度は原口さんが礼を述べた。
夫は細君の手柄だと聞いてさもうれしそうである。三人のうちでいちばん鄭重《ていちょう》な礼を述べたのは夫である。
開会後第一の土曜の昼過ぎにはおおぜいいっしょに来た。――広田先生と野々宮さんと与次郎と三四郎と。四人《よったり》はよそをあと回しにして、第一に「森の女」の部屋《へや》にはいった。与次郎が「あれだ、あれだ」と言う。人がたくさんたかっている。三四郎は入口でちょっと躊躇《ちゅうちょ》した。野々宮さんは超然としてはいった。
おおぜいのうしろから、のぞきこんだだけで、三四郎は退いた。腰掛け
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