ーた》をはいている。男はわざと会堂の垣《かき》に身を寄せた。
「ここでお目にかかればそれでよい。さっきから、あなたの出て来るのを待っていた」
「おはいりになればよいのに。寒かったでしょう」
「寒かった」
「お風邪はもうよいの。大事になさらないと、ぶり返しますよ。まだ顔色がよくないようね」
男は返事をしずに、外套の隠袋《かくし》から半紙に包んだものを出した。
「拝借した金です。ながながありがとう。返そう返そうと思って、ついおそくなった」
美禰子はちょっと三四郎の顔を見たが、そのまま逆らわずに、紙包みを受け取った。しかし手に持ったなり、しまわずにながめている。三四郎もそれをながめている。言葉が少しのあいだ切れた。やがて、美禰子が言った。
「あなた、御不自由じゃなくって」
「いいえ、このあいだからそのつもりで国から取り寄せておいたのだから、どうか取ってください」
「そう。じゃいただいておきましょう」
女は紙包みを懐へ入れた。その手を吾妻コートから出した時、白いハンケチを持っていた。鼻のところへあてて、三四郎を見ている。ハンケチをかぐ様子でもある。やがて、その手を不意に延ばした。ハンケチ
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