O四郎は急いで下宿に帰った。
夜半《よなか》から降りだした。三四郎は床《とこ》の中で、雨の音を聞きながら、尼寺へ行けという一句を柱にして、その周囲《まわり》にぐるぐる※[#「彳+低のつくり」、第3水準1−84−31]徊《ていかい》した。広田先生も起きているかもしれない。先生はどんな柱を抱いているだろう。与次郎は偉大なる暗闇の中に正体なく埋まっているに違いない。……
あくる日は少し熱がする。頭が重いから寝ていた。昼飯は床の上に起き直って食った。また一寝入りすると今度は汗が出た。気がうとくなる。そこへ威勢よく与次郎がはいって来た。ゆうべも見えず、けさも講義に出ないようだからどうしたかと思って尋ねたと言う。三四郎は礼を述べた。
「なに、ゆうべは行ったんだ。行ったんだ。君が舞台の上に出てきて、美禰子さんと、遠くで話をしていたのも、ちゃんと知っている」
三四郎は少し酔ったような心持ちである。口をききだすと、つるつると出る。与次郎は手を出して、三四郎の額をおさえた。
「だいぶ熱がある。薬を飲まなくっちゃいけない。風邪《かぜ》を引いたんだ」
「演芸場があまり暑すぎて、明るすぎて、そうして外へ出
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