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「ええ」
「おとっさんは」
「死にました」
「ぼくの母は憲法発布の翌年に死んだ」
一二
演芸会は比較的寒い時に開かれた。年はようやく押し詰まってくる。人は二十日《はつか》足らずの目のさきに春を控えた。市《いち》に生きるものは、忙しからんとしている。越年《おつねん》の計《はかりごと》は貧者の頭《こうべ》に落ちた。演芸会はこのあいだにあって、すべてののどかなるものと、余裕あるものと、春と暮の差別を知らぬものとを迎えた。
それが、いくらでもいる。たいていは若い男女《なんにょ》である。一日目《いちじつめ》に与次郎が、三四郎に向かって大成功と叫んだ。三四郎は二日目《ふつかめ》の切符を持っていた。与次郎が広田先生を誘って行けと言う。切符が違うだろうと聞けば、むろん違うと言う。しかし一人でほうっておくと、けっして行く気づかいがないから、君が寄って引っ張り出すのだと理由《わけ》を説明して聞かせた。三四郎は承知した。
夕刻に行ってみると、先生は明るいランプの下に大きな本を広げていた。
「おいでになりませんか」と聞くと、先生は少し笑いながら、無言のまま首を横に振った。子供のよう
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