チてからたびたび寝返りを打った。国にいるほうが寝やすい心持ちがする。偽りの記事――広田先生――美禰子――美禰子を迎えに来て連れていったりっぱな男――いろいろの刺激がある。
 夜中《よなか》からぐっすり寝た。いつものように起きるのが、ひどくつらかった。顔を洗う所で、同じ文科の学生に会った。顔だけは互いに見知り合いである。失敬という挨拶《あいさつ》のうちに、この男は例の記事を読んでいるらしく推した。しかし先方ではむろん話頭を避けた。三四郎も弁解を試みなかった。
 暖かい汁《しる》の香《か》をかいでいる時に、また故里《ふるさと》の母からの書信に接した。また例のごとく、長かりそうだ。洋服を着換えるのがめんどうだから、着たままの上へ袴《はかま》をはいて、懐へ手紙を入れて、出る。戸外《そと》は薄い霜で光った。
 通りへ出ると、ほとんど学生ばかり歩いている。それが、みな同じ方向へ行く。ことごとく急いで行く。寒い往来は若い男の活気でいっぱいになる。そのなかに霜降《しもふ》りの外套《がいとう》を着た広田先生の長い影が見えた。この青年の隊伍《たいご》に紛れ込んだ先生は、歩調においてすでに時代錯誤《アナクロ
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