ニ言う。その顔がただ寒いのではないらしい。はじめは火鉢へ乗りかかるように手をかざしていたが、やがて懐手《ふところで》になった。三四郎は与次郎の顔を陽気にするために、机の上のランプを端《はじ》から端へ移した。ところが与次郎は顎《あご》をがっくり落して、大きな坊主頭だけを黒く灯《ひ》に照らしている。いっこうさえない。どうかしたかと聞いた時に、首をあげてランプを見た。
「この家《うち》ではまだ電気を引かないのか」と顔つきにはまったく縁のないことを聞いた。
「まだ引かない。そのうち電気にするつもりだそうだ。ランプは暗くていかんね」と答えていると、急に、ランプのことは忘れたとみえて、
「おい、小川、たいへんな事ができてしまった」と言いだした。
 一応|理由《わけ》を聞いてみる。与次郎は懐《ふところ》から皺《しわ》だらけの新聞を出した。二枚重なっている。その一枚をはがして、新しく畳《たた》み直して、ここを読んでみろと差しつけた。読むところを指の頭で押えている。三四郎は目をランプのそばへ寄せた。見出しに大学の純文科とある。
 大学の外国文学科は従来西洋人の担当で、当事者はいっさいの授業を外国教師に依
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