ワったく二十世紀の気がしなくなるからいい。どうして今の世にああ間が抜けていられるだろうと思うと、それだけでたいへんな薬になる。いくらぼくがのん気でも、鼓の音のような絵はとてもかけないから」
「かこうともしないんじゃないか」
「かけないんだもの。今の東京にいる者に悠揚《ゆうよう》な絵ができるものか。もっとも絵にもかぎるまいけれども。――絵といえば、このあいだ大学の運動会へ行って、里見と野々宮さんの妹のカリカチュアーをかいてやろうと思ったら、とうとう逃げられてしまった。こんだ一つ本当の肖像画をかいて展覧会にでも出そうかと思って」
「だれの」
「里見の妹の。どうも普通の日本の女の顔は歌麿式《うたまろしき》や何かばかりで、西洋の画布《カンバス》にはうつりが悪くっていけないが、あの女や野々宮さんはいい。両方ともに絵になる。あの女が団扇《うちわ》をかざして、木立《こだち》をうしろに、明るい方を向いているところを等身《ライフサイズ》に写してみようかしらと思っている。西洋の扇は厭味《いやみ》でいけないが、日本の団扇は新しくっておもしろいだろう。とにかくはやくしないとだめだ。いまに嫁にでもいかれようもの
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