ミ会は激しく動きつつある。社会の産物たる文芸もまた動きつつある。動く勢いに乗じて、我々の理想どおりに文芸を導くためには、零細なる個人を団結して、自己の運命を充実し発展し膨脹しなくてはならぬ。今夕のビールとコーヒーは、かかる隠れたる目的を、一歩前に進めた点において、普通のビールとコーヒーよりも百倍以上の価ある尊きビールとコーヒーである。
 演説の意味はざっとこんなものである。演説が済んだ時、席にあった学生はことごとく喝采《かっさい》した。三四郎はもっとも熱心なる喝采者の一人であった。すると与次郎が突然立った。
「ダーターファブラ、シェクスピヤの使った字数《じかず》が何万字だの、イブセンの白髪《しらが》の数が何千本だのと言ってたってしかたがない。もっともそんなばかげた講義を聞いたってとらわれる気づかいはないから大丈夫だが、大学に気の毒でいけない。どうしても新時代の青年を満足させるような人間を引っ張って来なくっちゃ。西洋人じゃだめだ。第一幅がきかない。……」
 満堂はまたことごとく喝采した。そうしてことごとく笑った。与次郎の隣にいた者が、
「ダーターファブラのために祝盃をあげよう」と言いだし
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