ネいんだなと悟った。
やがてコーヒーが出る。一人が椅子《いす》を離れて立った。与次郎が激しく手をたたくと、ほかの者もたちまち調子を合わせた。
立った者は、新しい黒の制服を着て、鼻の下にもう髭《ひげ》をはやしている。背がすこぶる高い。立つには恰好《かっこう》のよい男である。演説めいたことを始めた。
我々が今夜ここへ寄って、懇親のために、一夕《いっせき》の歓をつくすのは、それ自身において愉快な事であるが、この懇親が単に社交上の意味ばかりでなく、それ以外に一種重要な影響を生じうると偶然ながら気がついたら自分は立ちたくなった。この会合はビールに始まってコーヒーに終っている。まったく普通の会合である。しかしこのビールを飲んでコーヒーを飲んだ四十人近くの人間は普通の人間ではない。しかもそのビールを飲み始めてからコーヒーを飲み終るまでのあいだに、すでに自己の運命の膨脹を自覚しえた。
政治の自由を説いたのは昔の事である。言論の自由を説いたのも過去の事である。自由とは単にこれらの表面にあらわれやすい事実のために専有されべき言葉ではない。我ら新時代の青年は偉大なる心の自由を説かねばならぬ時運に際会
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