写生文
夏目漱石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明暸《めいりょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)何となくゆとり[#「ゆとり」に傍点]がある。
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写生文の存在は近頃ようやく世間から認められたようであるが、写生文の特色についてはまだ誰も明暸《めいりょう》に説破したものがおらん。元来存在を認めらるると云う事はすでに認められるだけの特色を有していると云う意味に過ぎんのだから、存在を認められる以上は特色も認められた訳に相違ない。しかし認めらるると云うのは説明されるとは一様でない。桜と海棠《かいどう》の感じに相違のあるのは何人も認めている。その相違を説明しろと云われるとちょっとできにくい。写生文と普通の文章の差違は認められているにもかかわらず明かに道破されておらんのもこの理である。かの写生文を標榜《ひょうぼう》する人々といえども単にわが特色を冥々裡《めいめいり》に識別すると云うまでで、明かに指摘したものは今日に至るまで見当《みあた》らぬようである。虚子《きょし》、四方太《よもた》の諸君は折々この点に向って肯綮《こうけい》に
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