分の二だけ側面から遠くに望んだ。
 そのうち三沢はまた盆を持ってこっちへ帰って来た。自分の傍《そば》を通る時、彼は微笑しながら、「どうだい」と云った。自分はただ「御苦労さま」と挨拶《あいさつ》した。後《あと》から例の背の高い兄さんがやって来た。
「どうです、あちらへいらしって煙草でも御呑《おの》みになっちゃ。喫煙室はあすこの突き当りです」
 自分は三沢との間に緒口《いとぐち》のつきかけた談話はこれでまた流れてしまった。二人は彼に導かれて喫煙室に這入《はい》った。煙と男子に占領された比較的狭いその室《へや》は思ったより賑《にぎや》かであった。
 自分はその一隅《ひとすみ》にただ一人の知った顔を見出した。それは伶人《れいじん》の姓をもった眼の大きい男であった。ある協会の主要な一員として、舞台の上で巧《たくみ》にその大きな眼を利用する男であった。彼は台詞《せりふ》を使う時のような深い声で、誰かと話していたが、ほとんど自分達と入れ代りぐらいに、喫煙室を出て行った。
「とうとう役者になったんだそうだ」
「儲《もう》かるのかね」
「ええ儲かるんだろう」
「この間何とかをやるという事が新聞に出ていた
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