うと思って、ちょっと嫂《あによめ》の室《へや》を覗《のぞ》いたら、嫂は芳江を前に置いて裸人形に美しい着物を着せてやっていた。
「芳江大変大きくなったね」
 自分は芳江の頭へ立ちながら手をかけた。芳江はしばらく顔を見なかった叔父に突然|綾《あや》されたので、少しはにかんだように唇《くちびる》を曲げて笑っていた。門を出る時はかれこれ五時に近かったが、兄はまだ上野から帰らなかった。父は久しぶりだから飯《めし》でも食って彼に会って行けと云ったが、自分はとうとうそれまで腰を据《す》えていられなかった。

        十三

 翌日《あくるひ》自分は事務所の帰りがけに三沢を尋ねた。ちょうど髪を刈りに今しがた出かけたところだというので、自分は遠慮なく上り込んで彼を待つ事にした。
「この両三日《りょうさんにち》はめっきりお暖かになりました。もうそろそろ花も咲くでございましょう」
 主人の帰る間座敷へ出た彼の母は、いつもの通り丁寧《ていねい》な言葉で自分に話し掛けた。
 彼の室《へや》は例のごとく絵だのスケッチだので鼻を突きそうであった。中には額縁《がくぶち》も何《な》にもない裸のままを、ピンで壁の
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