からそれからととめどもなく深更まで廻転した。

        六

 それから三四日《さんよっか》の間というもの自分の頭は絶えず嫂の幽霊に追い廻された。事務所の机の前に立って肝心《かんじん》の図を引く時ですら、自分はこの祟《たたり》を払い退《の》ける手段を知らなかった。ある日には始終《しじゅう》他人の手を借りて仕事を運んで行くようなはがゆい思さえ加わった。こうして自分で自分を離れた気分を持ちながら、上部《うわべ》だけを人並にやって行くのに傍《はた》の者はなぜ不審がらないのだろうと疑ぐって見たりした。自分はよほど前から事務所ではもう快活な男として通用しないようになっていた。ことに近来は口数さえ碌《ろく》に利《き》かなかった。それでこの三四日間に起った変化もまた他《ひと》の注意に上《のぼ》らずに済んでいるのだろうと考えた。そうして自己と周囲と全く遮断《しゃだん》された人の淋《さび》しさを独《ひと》り感じた。
 自分はこの間に一人の嫂をいろいろに視た。――彼女は男子さえ超越する事のできないあるものを嫁に来たその日からすでに超越していた。あるいは彼女には始めから超越すべき牆《かき》も壁もなか
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