なし》をするうちに妙に引っ掛って来た。何の悪意もない彼には、最初いっこうその当こすりが通じなかったが、だんだん時間の進むに従って、彼らの本旨《ほんし》がようやく分って来た。
「馬鹿にもほどがあるね。露骨にいえばさ、あの娘さんを不幸にした原因は僕にある。精神病にしたのも僕だ、とこうなるんだね。そうして離別になった先の亭主は、まるで責任のないように思ってるらしいんだから失敬じゃないか」
「どうしてまたそう思うんだろう。そんなはずはないがね。君の誤解じゃないか」と自分が云った。
「誤解?」と彼は大きな声を出した。自分は仕方なしに黙った。彼はしきりにその親達の愚劣な点を述べたててやまなかった。その女の夫となった男の軽薄を罵《のの》しって措《お》かなかった。しまいにこう云った。
「なぜそんなら始めから僕にやろうと云わないんだ。資産や社会的の地位ばかり目当《めあて》にして……」
「いったい君は貰《もら》いたいと申し込んだ事でもあるのか」と自分は途中で遮《さえぎ》った。
「ないさ」と彼は答えた。
「僕がその娘さんに――その娘さんの大きな潤《うるお》った眼が、僕の胸を絶えず往来《ゆきき》するようになっ
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