。本当に情ないと思った。……」
「そう女みたように解釈すれば、何だって軽薄に見えるでしょうけれども……」
「そんな事を云うところが、つまりお父さんの悪いところを受け継《つ》いでいる証拠《しょうこ》になるだけさ。おれは直《なお》の事をお前に頼んで、その報告をいつまでも待っていた。ところがお前はいつまでも言葉を左右に託して、空恍《そらとぼ》けている……」

        二十二

「空恍けてると云われちゃちっと可哀《かわい》そうですね。話す機会もなし、また話す必要がないんですもの」
「機会は毎日ある。必要はお前になくてもおれの方にあるから、わざわざ頼んだのだ」
 自分はその時ぐっと行きつまった。実はあの事件以後、嫂《あによめ》について兄の前へ一人出て、真面目に彼女を論ずるのがいかにも苦痛だったのである。自分は話頭を無理に横へ向けようとした。
「兄さんはすでにお父さんを信用なさらず。僕もそのお父さんの子だという訳で、信用なさらないようだが、和歌の浦でおっしゃった事とはまるで矛盾していますね」
「何が」と兄は少し怒気を帯びて反問した。
「何がって、あの時、あなたはおっしゃったじゃありませんか
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