ゃなかろうかと思ってね。本当は感心しましたよ。どういう訳で景清を思い出したかと云うとね。ただ双方とも盲目《めくら》だからと云うばかりじゃない。どうもその女の態度がね……」
父は考えていた。父の筋向うに坐《すわ》っていた赭顔《あからがお》の客が、「全く気込《きごみ》が似ているからですね」とさもむずかしい謎《なぞ》でも解くように云った。
「全く気込です」と父はすぐ承服した。自分はこれで父の話が結末に来たのかと思って、「なるほどそれは面白い御話です」と全体を批評するような調子で云った。すると父は「まだ後《あと》があるんだ。後の方がまだ面白い。ことに二郎のような若い者が聞くと」とつけ加えた。
十七
父は意外な女の見識に、話の腰を折られて、やむをえず席を立とうとした。すると女は始めて女らしい表情を面《おもて》に湛《たた》えて、縋《すが》りつくように父をとめた。そうしていつ何日《いつか》どこで○○が自分を見たのかと聞いた。父は例の有楽座の事を包み蔵《かく》さず盲人《もうじん》に話して聞かせた。
「ちょうどあなたの隣に腰をかけていたんだそうです。あなたの方ではまるで知らなかっ
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