な菓子折を一つ添えて父に渡した。父はそれを受取って、俥《くるま》をその女の家に駆《か》った。
女の家は狭かったけれども小綺麗《こぎれい》にかつ住心地よくできていた。縁の隅《すみ》に丸く彫り抜いた御影《みかげ》の手水鉢《ちょうずばち》が据《す》えてあって、手拭掛《てぬぐいかけ》には小新らしい三越の手拭さえ揺《ゆら》めいていた。家内も小人数らしく寂然《ひっそり》として音もしなかった。
父はこの日当りの好いしかし茶がかった小座敷で、初めてその盲人《もうじん》に会った時、ちょっと何と云って好いか分らなかったそうである。
「おれのようなものが言句に窮するなんて馬鹿げた恥を話すようだが実際困ったね。何しろ相手が盲目なんだからね」
父はわざとこう云って皆《みん》なを興《きょう》がらせた。
彼はその場でとうとう男の名を打ち明けて、例の土産ものを取り出しつつ女の前に置いた。女は眼が悪いので菓子折を撫《な》でたり擦《さす》ったりして見た上、「どうも御親切に……」と恭《うやうや》しく礼を述べたが、その上にある紙包を手で取上げるや否や、少し変な顔をして「これは?」と念を押すように聞いた。父は例の気性《
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