からその巻きようが緩《ゆる》くなったり、緊《きつ》くなったりした。兄の顔色は青大将の熱度の変ずるたびに、それからその絡みつく強さの変ずるたびに、変った。
 自分は自分の寝台《ねだい》の上で、半《なかば》は想像のごとく半は夢のごとくにこの青大将と嫂とを連想してやまなかった。自分はこの詩に似たような眠《ねむり》が、駅夫の呼ぶ名古屋名古屋と云う声で、急に破られたのを今でも記憶している。その時汽車の音がはたりと留《とま》ると同時に、さあという雨の音が聞こえた。自分は靴足袋《くつたび》の裏に湿気《しめりけ》を感じて起き上ると、足の方に当る窓が塵除《ちりよけ》の紗《しゃ》で張ってあった。自分はいそいで窓を閉《た》て換えた。ほかの人のはどうかと思って、聞いて見たが、答がなかった。ただ嫂だけが雨が降り込むようだというので、やむをえず上から飛び下りてまた窓を閉て換えてやった。

        二

「雨のようね」と嫂が聞いた。
「ええ」
 自分は半《なか》ば風に吹き寄せられた厚い窓掛の、じとじとに湿《しめ》ったのを片方へがらりと引いた。途端《とたん》に母の寝返りを打つ音が聞こえた。
「二郎、ここはどこ
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