から」
「夜中《よなか》に宅《うち》が揺れやしなくって」
 これも嫂《あによめ》の兄に聞いた問であった。今度は兄がすぐ答えた。
「揺れた。お母さんは危険だからと云って下へ降りて行かれたくらい揺れた」
 自分は兄の眼色の険悪な割合に、それほど殺気を帯びていない彼の言語動作をようよう確め得た時やっと安心した。彼は自分の性急《せっかち》に比べると約五倍がたの癇癪持《かんしゃくもち》であった。けれども一種|天賦《てんぷ》の能力があって、時にその癇癪を巧《たくみ》に殺す事ができた。
 その内に明神様《みょうじんさま》へ御参りに行った母が帰って来た。彼女は自分の顔を見てようやく安心したというような色をしてくれた。
「よく早く帰れて好かったね。――まあ昨夕《ゆうべ》の恐ろしさったら、そりゃ御話にも何にもならないんだよ、二郎。この柱がぎいぎいって鳴るたんびに、座敷が右左に動《いご》くんだろう。そこへ持って来て、あの浪《なみ》の音がね。――わたしゃ今聞いても本当にぞっとするよ……」
 母は昨夕の暴風雨《あらし》をひどく怖《こわ》がった。ことにその聯想《れんそう》から出る、防波堤《ぼうはてい》を砕きにかか
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