来たに違いないと判じた。
「何かの本にでも出て来そうな死方ですね」
「本に出るか芝居でやるか知らないが、妾ゃ真剣にそう考えてるのよ。嘘《うそ》だと思うならこれから二人で和歌の浦へ行って浪でも海嘯でも構わない、いっしょに飛び込んで御目にかけましょうか」
「あなた今夜は昂奮している」と自分は慰撫《なだ》めるごとく云った。
「妾の方があなたよりどのくらい落ちついているか知れやしない。たいていの男は意気地なしね、いざとなると」と彼女は床の中で答えた。
三十八
自分はこの時始めて女というものをまだ研究していない事に気がついた。嫂《あによめ》はどこからどう押しても押しようのない女であった。こっちが積極的に進むとまるで暖簾《のれん》のように抵抗《たわい》がなかった。仕方なしにこっちが引き込むと、突然変なところへ強い力を見せた。その力の中《うち》にはとても寄りつけそうにない恐ろしいものもあった。またはこれなら相手にできるから進もうかと思って、まだ進みかねている中に、ふっと消えてしまうのもあった。自分は彼女と話している間|始終《しじゅう》彼女から翻弄《ほんろう》されつつあるような心
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