》の破裂するのを期待していた。そうしてその破裂の後《のち》に多く生ずる反動を機会として、兄の心を落ちつけようとした。自分は人より一倍強い程度で、この反動に罹《かか》り易《やす》い兄の気質をよく呑《の》み込んでいた。
 自分はだいぶ辛抱《しんぼう》して兄の鉄拳《てっけん》の飛んで来るのを待っていた。けれども自分の期待は全く徒労であった。兄は死んだ人のごとく静であった。ついには自分の方から狐のように変な眼遣《めづか》いをして、兄の顔を偸《ぬす》み見なければならなかった。兄は蒼《あお》い顔をしていた。けれどもけっして衝動的に動いて来る気色《けしき》には見えなかった。

        二十五

 ややあって兄は昂奮《こうふん》した調子でこう云った。
「二郎おれはお前を信用している。けれども直《なお》を疑ぐっている。しかもその疑ぐられた当人の相手は不幸にしてお前だ。ただし不幸と云うのは、お前に取って不幸というので、おれにはかえって幸《さいわい》になるかも知れない。と云うのは、おれは今明言した通り、お前の云う事なら何でも信じられるしまた何でも打明けられるから、それでおれには幸いなのだ。だから頼む
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