たが、どう間違えたものか、変に磯臭《いそくさ》い浜辺《はまべ》へ出た。そこには漁師《りょうし》の家が雑貨店と交《まじ》って貧しい町をかたち作っていた。古い旗を屋根の上に立てた汽船会社の待合所も見えた。
「何だか路《みち》が違ったようじゃありませんか」
 兄は相変らず下を向いて考えながら歩いていた。下には貝殻がそこここに散っていた。それを踏み砕く二人の足音が時々単調な歩行《ほこう》に一種|田舎《いなか》びた変化を与えた。兄はちょっと立ち留って左右を見た。
「ここは往《いき》に通らなかったかな」
「ええ通りゃしません」
「そうか」
 二人はまた歩き出した。兄は依然として下を向き勝であった。自分は路を迷ったため、存外宿へ帰るのが遅くなりはしまいかと心配した。
「何|狭《せま》い所だ。どこをどう間違えたって、帰れるのは同《おん》なじ事だ」
 兄はこう云ってすたすた行った。自分は彼の歩き方を後《うしろ》から見て、足に任せてという故《ふる》い言葉を思い出した。そうして彼より五六間|後《おく》れた事をこの場合何よりもありがたく感じた。
 自分は二人の帰り道に、兄から例の依頼というのをきっと打ち明けら
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