やめてくれないで、むやみに伸びて見せたり、縮んで見せたりするもんだから、隠し終《おお》せる段じゃない。親にも親類にも目《め》つかってしまった。怪《け》しからんと云う事になった。怪しかるとは自分でも思っていなかったが、だんだん聞き糾《ただ》して見ると、怪しからん意味がだいぶ違ってる。そこでいろいろ弁解して見たがなかなか聞いてくれない。親の癖に自分の云う事をちっとも信用しないのが第一不都合だと思うと同時に、第一の少女の傍《そば》にいたら、この先どうなるか分らない、ことに因《よ》ると実際弁解の出来ないような怪しからん事が出来《しゅったい》するかも知れないと考え出した。がどうしても離れる事が出来ない。しかも第二の少女に対しては気の毒である、済まん事になったと云う念が日々《にちにち》烈《はげ》しくなる。――こんな具合で三方四方から、両立しない感情が攻め寄せて来て、五色の糸のこんがらかったように、こっちを引くと、あっちの筋が詰る、あっちをゆるめるとこっちが釣れると云う按排《あんばい》で、乱れた頭はどうあっても解《ほど》けない。いろいろに工夫を積んで自分に愛想《あいそ》の尽きるほどひねくって見たが、
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