るんだから、猿の仕事である。梯子《はしご》が懸《かか》ってる。勾配《こうばい》も何にもない。こちらの壁にぴったり食っついて、棒を空《くう》にぶら下げたように、覗《のぞ》くと端《さき》が見えかねる。どこまで続いてるんだか、どこで縛《しば》りつけてあるんだか、まるで分らない。
「じゃ、己《おれ》が先へ下りるからね。気をつけて来たまえ」
と初さんが云った。初さんがこれほど叮嚀《ていねい》な言葉を使おうとは思いも寄らなかった。おおかた神妙《しんびょう》に下りましょうと出たんで、幾分《いくぶん》か憐愍《れんみん》の念を起したんだろう。やがて初さんは、ぐるりと引っ繰り返って、正式に穴の方へ尻を向けた。そうして屈《しゃが》んだ。と思うと、足からだんだん這入《はい》って行く。しまいには顔だけが残った。やがてその顔も消えた。顔が出ている間は、多少の安心もあったが、黒い頭の先までが、ずぼりと穴へはまった時は、さすがに心配なのと心細いのとで、じっとしていられなくって、足をつま立てるようにして、上から見下《みおろ》した。初さんは下りて行く。黒い頭とカンテラ[#「カンテラ」に傍点]の灯《ひ》だけが見える。その時
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