さんが表から帰って来て膳立《ぜんだ》てをしてくれた。ありがたい事に味噌汁《みそしる》がついていたんで、こいつを南京米の上から、ざっと掛けて、ざくざくと掻《か》き込んだんで、今度《こんだ》は壁土の味を噛《か》み分《わけ》ないで済んだ。すると婆さんが、
「御飯《おまんま》が済んだら、初《はつ》さんがシキ[#「シキ」に傍点]へ連れて行くって待ってるから、早くおいでなさい」
と、箸《はし》も置かない先から急《せ》き立てる。実はもう一杯くらい食わないと身体《からだ》が持つまいと思ってたところだが、こう催促されて見ると、無論御代りなんか盛《よそ》う必要はない。自分は、
「はあ、そうですか」
と立ち上がった。表へ出て見ると、なるほど上《あが》り口《くち》に一人掛けている。自分の顔を見て、
「御前《おめえ》か、シキ[#「シキ」に傍点]へ行くなあ」
と、石でもぶっ欠くような勢いで聞いた。
「ええ」
と素直に答えたら、
「じゃ、いっしょに来ねえ」
と云う。
「この服装《なり》でも好いんですか」
と叮嚀《ていねい》に聞き返すと、
「いけねえ、いけねえ。そんな服装で這入《へえ》れるもんか。ここへ親分とこから一
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