冷やかされずに、まあ無難《ぶなん》に済んだ。上がって来るものも、来るものも、みんな急いで降りて行くんで、調戯《からか》う暇がなかったんだろう。その代り一人に一度ずつは必ず睨《にら》まれた。そうこうしている内に、上がって来るものがようやく絶えたから、自分はようやく寛容《くつろ》いだ思いをして、囲炉裏《いろり》の炭の赤くなったのを見詰めて、いろいろ考え出した。もちろん纏《まと》まりようのない、かつ考えれば考えるほど馬鹿になる考えだが、火を見詰ていると、炭の中にそう云う妄想《もうぞう》がちらちらちらちら燃えてくるんだから仕方がない。とうとう自分の魂が赤い炭の中へ抜出して、火気《かっき》に煽《あお》られながら、むやみに踊をおどってるような変な心持になった時に、突然、
「草臥《くたび》れたろうから、もう御休みなさい」
と云われた。
見ると、さっきの婆さんが、立っている。やっぱり襷掛《たすきがけ》のままである。いつの間《ま》に上がって来たものか、ちっとも気がつかなかった。自分の魂が遠慮なく火の中を馳《か》け廻って、艶子《つやこ》さんになったり、澄江《すみえ》さんになったり、親爺《おやじ》になった
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