度に縮小して恐れ入っていると、
「御膳《ごぜん》を御上がんなさい」
と云う婆さんの声が聞えた。いつの間《ま》に婆さんが上がって来たんだか、自分の魂が鳩の卵のように小さくなって、萎縮《いしゅく》した真最中だったから、御膳の声が耳に入るまではまるで気がつかなかった。見ると剥《は》げた御膳《おぜん》の上に縁《ふち》の欠けた茶碗が伏せてある。小《ち》さい飯櫃《めしびつ》も乗っている。箸《はし》は赤と黄に塗り分けてあるが、黄色い方の漆《うるし》が半分ほど落ちて木地《きじ》が全く出ている。御菜には糸蒟蒻《いとごんにゃく》が一皿ついていた。自分は伏目になってこの御膳の光景を見渡した時、大いに食いたくなった。実は今朝《けさ》から水一滴も口へ入れていない。胃は全く空《から》である。もし空でなければ、昨日《きのう》食った揚饅頭《あげまんじゅう》と薩摩芋《さつまいも》があるばかりである。飯の気《け》を離れる事約二昼夜になるんだから、いかに魂が萎縮しているこの際でも、御櫃《おはち》の影を見るや否や食慾は猛然として咽喉元《のどもと》まで詰め寄せて来た。そこで、冷かしも、交《ま》ぜっ返しも気に掛ける暇《いとま》な
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