ん》で過去を研究して、御互に得た結果を交換して自然と吾邦《わがくに》将来の批評の土台を築いたらよかろうと相談をするのである。実は西洋でもさほど進歩しておらんと思う。
 余は今日までに多少の創作をした。この創作が世間に解せられずして不平だからこの言をなすのでないのは無論である。余の作物は余の予期以上に歓迎されておる。たといある人々から種々の注文が出ても、その注文者の立場は余によくわかっておる。したがってこれらの人に対して不平はなおさらない。だから余の云う事は自己の作物のためでない事は明かである。余はただ吾邦未来の文運のために云うのである。



底本:「夏目漱石全集10」ちくま文庫、筑摩書房
   1988(昭和63)年7月26日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版夏目漱石全集」筑摩書房
   1971(昭和46)年4月〜1972(昭和47)年1月
入力:柴田卓治
校正:大野晋
1999年9月15日公開
2004年2月26日修正
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