オをしているのを手水鉢《ちょうずばち》の葉蘭の影に隠れて聞いているとこうであった。
「三毛は御飯をたべるかい」「いいえ今朝からまだ何《なん》にも食べません、あったかにして御火燵《おこた》に寝かしておきました」何だか猫らしくない。まるで人間の取扱を受けている。
一方では自分の境遇と比べて見て羨《うらや》ましくもあるが、一方では己《おの》が愛している猫がかくまで厚遇を受けていると思えば嬉しくもある。
「どうも困るね、御飯をたべないと、身体《からだ》が疲れるばかりだからね」「そうでございますとも、私共でさえ一日|御※[#「食へん+善」、第4水準2−92−71]《ごぜん》をいただかないと、明くる日はとても働けませんもの」
下女は自分より猫の方が上等な動物であるような返事をする。実際この家《うち》では下女より猫の方が大切かも知れない。
「御医者様へ連れて行ったのかい」「ええ、あの御医者はよっぽど妙でございますよ。私が三毛をだいて診察場へ行くと、風邪《かぜ》でも引いたのかって私の脈《みゃく》をとろうとするんでしょう。いえ病人は私ではございません。これですって三毛を膝の上へ直したら、にやにや笑い
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