黒いんだね」
「ええ、真黒です。ちょうど私には相当です」
「それで金田の方はどうする気だい」
「どうする気でもありません」
「そりゃ少し義理がわるかろう。ねえ迷亭」
「わるくもないさ。ほかへやりゃ同じ事だ。どうせ夫婦なんてものは闇の中で鉢合せをするようなものだ。要するに鉢合せをしないでもすむところをわざわざ鉢合せるんだから余計な事さ。すでに余計な事なら誰と誰の鉢が合ったって構いっこないよ。ただ気の毒なのは鴛鴦歌《えんおうか》を作った東風君くらいなものさ」
「なに鴛鴦歌は都合によって、こちらへ向け易《か》えてもよろしゅうございます。金田家の結婚式にはまた別に作りますから」
「さすが詩人だけあって自由自在なものだね」
「金田の方へ断わったかい」と主人はまだ金田を気にしている。
「いいえ。断わる訳がありません。私の方でくれとも、貰いたいとも、先方へ申し込んだ事はありませんから、黙っていれば沢山です。――なあに黙ってても沢山ですよ。今時分は探偵が十人も二十人もかかって一部始終残らず知れていますよ」
 探偵と云う言語《ことば》を聞いた、主人は、急に苦《にが》い顔をして
「ふん、そんなら黙っていろ
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