ち》あれからして乙《おつ》だね。そうして塩風に吹かれつけているせいか、どうも、色が黒いね。男だからあれで済むが女があれじゃさぞかし困るだろう」と迷亭君が一人|這入《はい》ると肝心《かんじん》の話はどっかへ飛んで行ってしまう。
「女もあの通り黒いのです」
「それでよく貰い手があるね」
「だって一国中《いっこくじゅう》ことごとく黒いのだから仕方がありません」
「因果《いんが》だね。ねえ苦沙弥君」
「黒い方がいいだろう。生《なま》じ白いと鏡を見るたんびに己惚《おのぼれ》が出ていけない。女と云うものは始末におえない物件だからなあ」と主人は喟然《きぜん》として大息《たいそく》を洩《も》らした。
「だって一国中ことごとく黒ければ、黒い方で己惚《うぬぼ》れはしませんか」と東風君がもっともな質問をかけた。
「ともかくも女は全然不必要な者だ」と主人が云うと、
「そんな事を云うと妻君が後でご機嫌がわるいぜ」と笑いながら迷亭先生が注意する。
「なに大丈夫だ」
「いないのかい」
「小供を連れて、さっき出掛けた」
「どうれで静かだと思った。どこへ行ったのだい」
「どこだか分らない。勝手に出てあるくのだ」
「そう
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