ら、ちょっとどけたまえ」
「君さっきから、六|返《ぺん》待ったをしたじゃないか」
「記憶のいい男だな。向後《こうご》は旧に倍し待ったを仕《つかまつ》り候。だからちょっとどけたまえと云うのだあね。君もよッぽど強情だね。座禅なんかしたら、もう少し捌《さば》けそうなものだ」
「しかしこの石でも殺さなければ、僕の方は少し負けになりそうだから……」
「君は最初から負けても構わない流じゃないか」
「僕は負けても構わないが、君には勝たしたくない」
「飛んだ悟道だ。相変らず春風影裏《しゅんぷうえいり》に電光《でんこう》をきってるね」
「春風影裏じゃない、電光影裏だよ。君のは逆《さかさ》だ」
「ハハハハもうたいてい逆《さ》かになっていい時分だと思ったら、やはりたしかなところがあるね。それじゃ仕方がないあきらめるかな」
「生死事大《しょうしじだい》、無常迅速《むじょうじんそく》、あきらめるさ」
「アーメン」と迷亭先生今度はまるで関係のない方面へぴしゃりと一石《いっせき》を下《くだ》した。
 床の間の前で迷亭君と独仙君が一生懸命に輸贏《しゅえい》を争っていると、座敷の入口には、寒月君と東風君が相ならんでその
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