よ。そんな事をするのがわるいとしても、あんなに心配させちゃ、若い男を一人殺してしまいますよ。ありゃ頭は大きいが人相はそんなにわるくありません。鼻なんかぴくぴくさせて可愛いです」
「君も大分《だいぶ》迷亭見たように呑気《のんき》な事を云うね」
「何、これが時代思潮です、先生はあまり昔《むか》し風《ふう》だから、何でもむずかしく解釈なさるんです」
「しかし愚《ぐ》じゃないか、知りもしないところへ、いたずらに艶書《えんしょ》を送るなんて、まるで常識をかいてるじゃないか」
「いたずらは、たいがい常識をかいていまさあ。救っておやんなさい。功徳《くどく》になりますよ。あの容子《ようす》じゃ華厳《けごん》の滝へ出掛けますよ」
「そうだな」
「そうなさい。もっと大きな、もっと分別のある大僧《おおぞう》共がそれどころじゃない、わるいいたずらをして知らん面《かお》をしていますよ。あんな子を退校させるくらいなら、そんな奴らを片《かた》っ端《ぱし》から放逐でもしなくっちゃ不公平でさあ」
「それもそうだね」
「それでどうです上野へ虎の鳴き声をききに行くのは」
「虎かい」
「ええ、聞きに行きましょう。実は二三日中
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