か」
「いいえ、僕じゃないんです」
「浜田が送ったのかい」
「浜田でもないんです」
「じゃ誰が送ったんだい」
「誰だか分らないんです」
「ちっとも要領を得ないな。では誰も送らんのかい」
「名前だけは僕の名なんです」
「名前だけは君の名だって、何の事だかちっとも分らんじゃないか。もっと条理を立てて話すがいい。元来その艶書を受けた当人はだれか」
「金田って向横丁《むこうよこちょう》にいる女です」
「あの金田という実業家か」
「ええ」
「で、名前だけ借したとは何の事だい」
「あすこの娘がハイカラで生意気だから艶書を送ったんです。――浜田が名前がなくちゃいけないって云いますから、君の名前をかけって云ったら、僕のじゃつまらない。古井武右衛門の方がいいって――それで、とうとう僕の名を借してしまったんです」
「で、君はあすこの娘を知ってるのか。交際でもあるのか」
「交際も何もありゃしません。顔なんか見た事もありません」
「乱暴だな。顔も知らない人に艶書をやるなんて、まあどう云う了見で、そんな事をしたんだい」
「ただみんながあいつは生意気で威張ってるて云うから、からかってやったんです」
「ますます乱暴
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