《さ》っきからすでにしびれ[#「しびれ」に傍点]が切れかかって少々足の先は困難を訴えているのである。それにもかかわらず敷かない。布団が手持無沙汰に控《ひか》えているにもかかわらず敷かない。主人がさあお敷きと云うのに敷かない。厄介な毬栗坊主だ。このくらい遠慮するなら多人数《たにんず》集まった時もう少し遠慮すればいいのに、学校でもう少し遠慮すればいいのに、下宿屋でもう少し遠慮すればいいのに。すまじきところへ気兼《きがね》をして、すべき時には謙遜《けんそん》しない、否|大《おおい》に狼藉《ろうぜき》を働らく。たちの悪るい毬栗坊主だ。
ところへ後《うし》ろの襖《ふすま》をすうと開けて、雪江さんが一碗の茶を恭《うやうや》しく坊主に供した。平生なら、そらサヴェジ・チーが出たと冷《ひ》やかすのだが、主人一人に対してすら痛み入《い》っている上へ、妙齢の女性《にょしょう》が学校で覚え立ての小笠原流《おがさわらりゅう》で、乙《おつ》に気取った手つきをして茶碗を突きつけたのだから、坊主は大《おおい》に苦悶《くもん》の体《てい》に見える。雪江さんは襖《ふすま》をしめる時に後ろからにやにやと笑った。して見ると
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