ト「盗難品は……山の芋一箱」とつけた。
泥棒はこの時よほどおかしかったと見えて、下を向いて着物の襟《えり》へあごを入れた。迷亭はアハハハと笑いながら「山の芋がよほど惜しかったと見えるね」と云った。巡査だけは存外真面目である。
「山の芋は出ないようだがほかの物件はたいがい戻ったようです。――まあ来て見たら分るでしょう。それでね、下げ渡したら請書《うけしょ》が入るから、印形《いんぎょう》を忘れずに持っておいでなさい。――九時までに来なくってはいかん。日本堤《にほんづつみ》分署《ぶんしょ》です。――浅草警察署の管轄内《かんかつない》の日本堤分署です。――それじゃ、さようなら」と独《ひと》りで弁じて帰って行く。泥棒君も続いて門を出る。手が出せないので、門をしめる事が出来ないから開け放しのまま行ってしまった。恐れ入りながらも不平と見えて、主人は頬をふくらして、ぴしゃりと立て切った。
「アハハハ君は刑事を大変尊敬するね。つねにああ云う恭謙《きょうけん》な態度を持ってるといい男だが、君は巡査だけに鄭寧《ていねい》なんだから困る」
「だってせっかく知らせて来てくれたんじゃないか」
「知らせに来るった
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