ニある以上は差し出すもので、とられるものでないには極《きま》っている。泥棒にあったのではあるまいし、とられたとは不穏当である。しかるにも関せず、盗難にでも罹《かか》ったかのごとくに思ってるらしい主人がいかに軍隊の歓迎だと云って、いかに華族様の勧誘だと云って、強談《ごうだん》で持ちかけたらいざ知らず、活版の手紙くらいで金銭を出すような人間とは思われない。主人から云えば軍隊を歓迎する前にまず自分を歓迎したいのである。自分を歓迎した後《あと》なら大抵のものは歓迎しそうであるが、自分が朝夕《ちょうせき》に差《さ》し支《つか》える間は、歓迎は華族様に任《まか》せておく了見らしい。主人は第二信を取り上げたが「ヤ、これも活版だ」と云った。
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時下秋冷の候《こう》に候《そろ》処貴家益々御隆盛の段|奉賀上候《がしあげたてまつりそろ》陳《のぶ》れば本校儀も御承知の通り一昨々年以来二三野心家の為めに妨げられ一時其極に達し候得共《そうらえども》是れ皆|不肖針作《ふしょうしんさく》が足らざる所に起因すと存じ深く自《みずか》ら警《いまし》むる所あり臥薪甞胆《がしんしょうたん》其の苦辛《くしん
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