l《ふたり》がばったりと出逢ったのである。近来は金田の邸内も珍らしくなくなったから、滅多《めった》にあちらの方角へは足が向かなかったが、こう御目に懸って見ると、何となく御懐《おなつ》かしい。鈴木にも久々《ひさびさ》だから余所《よそ》ながら拝顔の栄を得ておこう。こう決心してのそのそ御両君の佇立《ちょりつ》しておらるる傍《そば》近く歩み寄って見ると、自然両君の談話が耳に入《い》る。これは吾輩の罪ではない。先方が話しているのがわるいのだ。金田君は探偵さえ付けて主人の動静を窺《うか》がうくらいの程度の良心を有している男だから、吾輩が偶然君の談話を拝聴したって怒《おこ》らるる気遣《きづかい》はあるまい。もし怒られたら君は公平と云う意味を御承知ないのである。とにかく吾輩は両君の談話を聞いたのである。聞きたくて聴いたのではない。聞きたくもないのに談話の方で吾輩の耳の中へ飛び込んで来たのである。
「只今御宅へ伺いましたところで、ちょうどよい所で御目にかかりました」と藤《とう》さんは鄭寧《ていねい》に頭をぴょこつかせる。
「うむ、そうかえ。実はこないだから、君にちょっと逢いたいと思っていたがね。それはよ
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