a柿を十二個ずつ食った。これは渋柿を食えば便秘する、便秘すれば逆上は必ず起るという理論から来たものだ。またある人はかん徳利を持って鉄砲風呂《てっぽうぶろ》へ飛び込んだ。湯の中で酒を飲んだら逆上するに極《きま》っていると考えたのである。その人の説によるとこれで成功しなければ葡萄酒《ぶどうしゅ》の湯をわかして這入《はい》れば一|返《ぺん》で功能があると信じ切っている。しかし金がないのでついに実行する事が出来なくて死んでしまったのは気の毒である。最後に古人の真似をしたらインスピレーションが起るだろうと思いついた者がある。これはある人の態度動作を真似ると心的状態もその人に似てくると云う学説を応用したのである。酔っぱらいのように管《くだ》を捲《ま》いていると、いつの間《ま》にか酒飲みのような心持になる、坐禅をして線香一本の間我慢しているとどことなく坊主らしい気分になれる。だから昔からインスピレーションを受けた有名の大家の所作《しょさ》を真似れば必ず逆上するに相違ない。聞くところによればユーゴーは快走船《ヨット》の上へ寝転《ねころ》んで文章の趣向を考えたそうだから、船へ乗って青空を見つめていれば必
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