ヲる、のぼせが下がる、これまた自然の順序にして毫《ごう》も疑を挟《さしはさ》むべき余地はない。かようにいろいろな方法を用いてのぼせ[#「のぼせ」に傍点]を下げる工夫は大分《だいぶ》発明されたが、まだのぼせ[#「のぼせ」に傍点]を引き起す良方が案出されないのは残念である。一概に考えるとのぼせは損あって益なき現象であるが、そうばかり速断してならん場合がある。職業によると逆上はよほど大切な者で、逆上せんと何にも出来ない事がある。その中《うち》でもっとも逆上を重んずるのは詩人である。詩人に逆上が必要なる事は汽船に石炭が欠くべからざるような者で、この供給が一日でも途切れると彼れ等は手を拱《こまぬ》いて飯を食うよりほかに何等の能もない凡人になってしまう。もっとも逆上は気違の異名《いみょう》で、気違にならないと家業《かぎょう》が立ち行かんとあっては世間体《せけんてい》が悪いから、彼等の仲間では逆上を呼ぶに逆上の名をもってしない。申し合せてインスピレーション、インスピレーションとさも勿体《もったい》そうに称《とな》えている。これは彼等が世間を瞞着《まんちゃく》するために製造した名でその実は正に逆上であ
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