ナ一《い》っぱし腕があるつもりだから、――つまり自分の損だあな」「白銀町《しろかねちょう》にも古い人が亡《な》くなってね、今じゃ桶屋《おけや》の元さんと煉瓦屋《れんがや》の大将と親方ぐれえな者だあな。こちとらあこうしてここで生れたもんだが、民さんなんざあ、どこから来たんだか分りゃしねえ」「そうよ。しかしよくあれだけになったよ」「うん。どう云うもんか人に好かれねえ。人が交際《つきあ》わねえからね」と徹頭徹尾民さんを攻撃する。
 天水桶はこのくらいにして、白い湯の方を見るとこれはまた非常な大入《おおいり》で、湯の中に人が這入《はい》ってると云わんより人の中に湯が這入ってると云う方が適当である。しかも彼等はすこぶる悠々閑々《ゆうゆうかんかん》たる物で、先刻《さっき》から這入るものはあるが出る物は一人もない。こう這入った上に、一週間もとめておいたら湯もよごれるはずだと感心してなおよく槽《おけ》の中を見渡すと、左の隅に圧《お》しつけられて苦沙弥先生が真赤《まっか》になってすくんでいる。可哀《かわい》そうに誰か路をあけて出してやればいいのにと思うのに誰も動きそうにもしなければ、主人も出ようとする気
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