じゅんわん》の中で盛に舞踏会を催うしている。せめて吾輩の這入《はい》れるだけ御三がこの戸を開けておけば善いのに、気の利かぬ山出しだ。
今度はへっついの影で吾輩の鮑貝《あわびがい》がことりと鳴る。敵はこの方面へも来たなと、そーっと忍び足で近寄ると手桶《ておけ》の間から尻尾《しっぽ》がちらと見えたぎり流しの下へ隠れてしまった。しばらくすると風呂場でうがい茶碗が金盥《かなだらい》にかちりと当る。今度は後方《うしろ》だと振りむく途端に、五寸近くある大《おおき》な奴がひらりと歯磨の袋を落して椽《えん》の下へ馳《か》け込む。逃がすものかと続いて飛び下りたらもう影も姿も見えぬ。鼠を捕《と》るのは思ったよりむずかしい者である。吾輩は先天的鼠を捕る能力がないのか知らん。
吾輩が風呂場へ廻ると、敵は戸棚から馳け出し、戸棚を警戒すると流しから飛び上り、台所の真中に頑張《がんば》っていると三方面共少々ずつ騒ぎ立てる。小癪《こしゃく》と云おうか、卑怯《ひきょう》と云おうかとうてい彼等は君子の敵でない。吾輩は十五六回はあちら、こちらと気を疲らし心《しん》を労《つか》らして奔走努力して見たがついに一度も成功しな
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