あすこの団子を食った事がありますか。奥さん一返行って食って御覧。柔らかくて安いです。酒も飲ませます」と例によって秩序のない駄弁を揮《ふる》ってるうちに主人はもう帽子を被って沓脱《くつぬぎ》へ下りる。
 吾輩はまた少々休養を要する。主人と多々良君が上野公園でどんな真似をして、芋坂で団子を幾皿食ったかその辺の逸事は探偵の必要もなし、また尾行《びこう》する勇気もないからずっと略してその間《あいだ》休養せんければならん。休養は万物の旻天《びんてん》から要求してしかるべき権利である。この世に生息すべき義務を有して蠢動《しゅんどう》する者は、生息の義務を果すために休養を得ねばならぬ。もし神ありて汝《なんじ》は働くために生れたり寝るために生れたるに非ずと云わば吾輩はこれに答えて云わん、吾輩は仰せのごとく働くために生れたり故に働くために休養を乞うと。主人のごとく器械に不平を吹き込んだまでの木強漢《ぼくきょうかん》ですら、時々は日曜以外に自弁休養をやるではないか。多感多恨にして日夜心神を労する吾輩ごとき者は仮令《たとい》猫といえども主人以上に休養を要するは勿論の事である。ただ先刻《さっき》多々良君が吾輩
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