らんか、今から三四個月すると倍になります。ほんに少し金さえあれば、すぐ二倍にでも三倍にでもなります」
「そんな御金があれば泥棒に逢ったって困りゃしないわ」
「それだから実業家に限ると云うんです。先生も法科でもやって会社か銀行へでも出なされば、今頃は月に三四百円の収入はありますのに、惜しい事でござんしたな。――先生あの鈴木藤十郎と云う工学士を知ってなさるか」
「うん昨日《きのう》来た」
「そうでござんすか、せんだってある宴会で逢いました時先生の御話をしたら、そうか君は苦沙弥《くしゃみ》君のところの書生をしていたのか、僕も苦沙弥君とは昔《むか》し小石川の寺でいっしょに自炊をしておった事がある、今度行ったら宜《よろ》しく云うてくれ、僕もその内尋ねるからと云っていました」
「近頃東京へ来たそうだな」
「ええ今まで九州の炭坑におりましたが、こないだ東京|詰《づめ》になりました。なかなか旨《うま》いです。私《わたし》なぞにでも朋友のように話します。――先生あの男がいくら貰ってると思いなさる」
「知らん」
「月給が二百五十円で盆暮に配当がつきますから、何でも平均四五百円になりますばい。あげな男が、よ
前へ
次へ
全750ページ中294ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング