んに煮て御貰い。唐津《からつ》の山の芋は東京のとは違ってうまかあ」と三平君が国自慢をすると、細君はようやく気が付いて
「多々良さんせんだっては御親切に沢山ありがとう」
「どうです、喰べて見なすったか、折れんように箱を誂《あつ》らえて堅くつめて来たから、長いままでありましたろう」
「ところがせっかく下すった山の芋を夕《ゆう》べ泥棒に取られてしまって」
「ぬす盗《と》が? 馬鹿な奴ですなあ。そげん山の芋の好きな男がおりますか?」と三平君|大《おおい》に感心している。
「御母《おか》あさま、夕べ泥棒が這入《はい》ったの?」と姉が尋ねる。
「ええ」と細君は軽《かろ》く答える。
「泥棒が這入って――そうして――泥棒が這入って――どんな顔をして這入ったの?」と今度は妹が聞く。この奇問には細君も何と答えてよいか分らんので
「恐《こわ》い顔をして這入りました」と返事をして多々良君の方を見る。
「恐い顔って多々良さん見たような顔なの」と姉が気の毒そうにもなく、押し返して聞く。
「何ですね。そんな失礼な事を」
「ハハハハ私《わたし》の顔はそんなに恐いですか。困ったな」と頭を掻《か》く。多々良君の頭の後部に
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