の頭を叩いては安眠の妨害になるからよしてくれって言ったっけ。しかし僕のは竹刀だが、この鈴木将軍のは手暴《てあら》だぜ。石塔と相撲をとって大小三個ばかり転がしてしまったんだから」
「あの時の坊主の怒り方は実に烈しかった。是非元のように起せと云うから人足を傭《やと》うまで待ってくれと云ったら人足じゃいかん懺悔《ざんげ》の意を表するためにあなたが自身で起さなくては仏の意に背《そむ》くと云うんだからね」
「その時の君の風采《ふうさい》はなかったぜ、金巾《かなきん》のしゃつに越中褌《えっちゅうふんどし》で雨上りの水溜りの中でうんうん唸《うな》って……」
「それを君がすました顔で写生するんだから苛《ひど》い。僕はあまり腹を立てた事のない男だが、あの時ばかりは失敬だと心《しん》から思ったよ。あの時の君の言草をまだ覚えているが君は知ってるか」
「十年前の言草なんか誰が覚えているものか、しかしあの石塔に帰泉院殿《きせんいんでん》黄鶴大居士《こうかくだいこじ》安永五年|辰《たつ》正月と彫《ほ》ってあったのだけはいまだに記憶している。あの石塔は古雅に出来ていたよ。引き越す時に盗んで行きたかったくらいだ。実に
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